もぞっ。
「…?」
もぞもぞもぞっ。
「…。」
隣で、いかにも起きています、と主張しているようなもぞもぞとした音。
いつもなら寝ているはずの銀次が、起きている…?
本人には絶対に秘密だが、
自分が寝る前に必ず銀次にキスをするのは日課となっている。
でもそれも、銀次がしっかり寝ているからこそできることで…。
現在完璧に起きている銀次には、到底できない…。
寝る前にキスをする、というのが当たり前になっている蛮としては、
もうキスをしなければ眠れない。
…どーしよー…キスできねェじゃん…
ふと時計を見ると、あと二分あたりで来年となる。
…来年も、これからも…
俺はコイツと…銀次と、一緒に居てェなぁ…
もう、大切な人を失いたくないから。
コイツだけはもう手放さないと、俺は決めた。
…ん?居てェなぁ、じゃねェな。
居るんだよ。
絶対、死ぬまで隣に居てやるんだ…
そんな事を考えていたら、どうやら年を越したようで。
心の中で、銀次に
『今年も、これからもずっと一緒にいような。』
と唱えた。
…と、その時、隣でもぞもぞ動いていた銀次が急に身体を起こした。
「銀次?どした?」
蛮も身体を起こし、銀次の方を向いた。
「蛮ちゃんっ明けましておめでとうっ!!これからもよろしくねっ!!」
「…」
いつも寝るのが早い銀次が、
俺にこのことを言うが為に起きていたのだと考えると、
…どうしようもなく、愛しかった。
その感情につい何も言えずにいると、銀次は不安に感じたらしい。
「蛮ちゃん…?怒った…?」
そんな銀次に微笑みながら、
「違ェよ。…俺も、ちょうどお前とずっと一緒に居てェなぁ、って思ってたから…嬉しかったんだ。」
と正直に伝えた。
「蛮、ちゃ…」
何故か銀次は泣き目になりながら俺を見つめた。
「お、おい…?どうした、俺なんか泣かせるようなこと…」
正直、相当焦った。
俺が、何か泣かせるようなことを言ってしまったんじゃねェか、と。
「違ぅ、の…。蛮ちゃんが、言ってくれた、こと…スゴく…嬉しくて…!!」
銀次の瞳から、涙が溢れた。
「銀、次…」
俺の言った事がスゴく嬉しかった、と言いながら泣く銀次。
…こんな可愛い生物を、抱きしめられずにはいられない。
「蛮ちゃん…」
俺の胸に顔を埋めながら、俺の名を呼ぶ。
「ん?なんだ…?」
自分でも驚く程、優しい声が出た。
「あのね、ワガママ、言っていいかな…?」
…涙目で見つめられて、断れるわけがないだろう。
「なんだよ、言ってみろ…」
銀次の見た目よりも柔らかい金の髪を撫でる。…心地いい。
「うん…蛮ちゃん、今年だけじゃなくて…
来年も、再来年も、ずーっと、ずーーっっと一緒にいてくれる…?」
…今度は俺が泣きそうになってしまった。
それを隠すように、銀次の肩口に顔を埋める。
「…俺もさっき、それ思ってたぜ…ずっと、ずーっとお前と一緒にいれたら、って。
もう離さねェ…お前は、俺のモノだ…」
蛮の唇から紡がれる心地のよい声。
その声でこんなことを言われて、嬉しくないわけがない…
「蛮ちゃんっ…蛮ちゃん…!大好きだよ、大好きだよぉ…!!一番、大好きだよぉっ…!!」
もっと、この気持ちを伝えられる言葉があればいいのに。
蛮ちゃんに抱きつきながら、オレはそう思った。
ずっと、一緒にいようね…蛮ちゃん。
うちの美堂さんは随分甘いような感じがします。だけど、銀次だけに甘い美堂さんが大好きなんです・∀・