噛む

 

言えねェだろ、こんな狂気じみたこと。
この世で一番愛している奴の血を見て、興奮した、なんて。
ましてや、俺が流させたっつーことに昏い歓喜を…感じたんだ。

 

ゴメンな、銀次。
でも、俺が死ぬまでは…俺に、縛られていて?
死んだとしても、解放してやれそうにも…ないけれど。

それでも、傍にいてほしいんだ。
銀次。

 


「…っあ、ん…」
たまにあるんだ、こーゆーの。
理由はわからないけど、蛮ちゃんがひらすらに…オレを求めてくること。
いつものエッチとは違う。

あまり言葉を交わすことはないし、オレが「もう無理」とネを上げても、解放されることはない。
それこそ、蛮ちゃんの気が済むまで。

普段の行為を甘い媚薬と例えるならば。
こっちは、猛毒。

一度侵されてしまったら、解毒剤を摂るか…自身の最期を待つか。
それしか逃れる方法はない。

オレに毒を飲ますのは蛮ちゃん。
解毒剤を飲ますのも蛮ちゃん。
そして、オレを壊せるのも…蛮ちゃん、ただ一人。


「ひぁぁぁん!きゃ…ぁあっ!」
――コワれる。
初めて蛮ちゃんがこうなったときは、本当にそう思った。
容赦の無い交わり。終わりの見えない絶頂。
正直、怖かった。

でも、次の日。
オレが目覚めた時、蛮ちゃんはすっごく心配した顔で、こっちを見て。
「ごめん」「悪かった」…何度も謝ってきた。

理由もなく蛮ちゃんが乱暴することはないって信じてるし、こんなことで嫌いになんてならない。

そう告げると、蛮ちゃんは少し安心したように、でも申し訳なさそうに…微笑んだ。
そのあとも、何回かそういうのがあって。

…たぶん、オレと一緒。雨が降ると、憂鬱な気分になるのと同じで…
蛮ちゃんにも、何かで気が乱れることがあるんだと思う。

こんなときの蛮ちゃんとの交わりは、少し痛みが伴うこともあるけど。
蛮ちゃんが自分の中に溜めこんじゃうよりも、オレとシて解消してくれる方が嬉しいから…。

「はぁっ…!っく、ぅ…ひンっ…!」
「銀次…」
…あ、名前…呼んでくれた。
こういう日は、あんまり呼んでくれないから…。

「ん、ぁっ…蛮ちゃぁんっ…!」
低い声で囁かれて、背筋をゾクン…と何かが這う。

――ぐちゅっ…
「あぁぁぁっ!」
突然、オレの感じてどうしようもないトコロを、蛮ちゃんの硬い先端で擦られる。

「ひッ…あ、やぁっ…やめっ…!」
ふいに、蛮ちゃんが胸の飾りを指先でつまんだ。
…後ろからの刺激と、胸の刺激。
両方から責められて、オレのモノがはじけてしまった。

「うぁぁっ…!ふ、ァ…」

――ぴゅくっ…ドク…
「ん…ふっ…」
達した余韻にカラダが震える。
呼吸もまだ整わない。
…でも、今日の蛮ちゃんが大人しくしてくれるわけもなくて…。

「っは…あンっ!やっ、待って…いやぁっ!」
何度も打ちつけられた秘部に、また蛮が埋まる。
イったばかりのカラダに、深い挿入は苦しいほどの快感を与えた。
しかも、蛮ちゃんはソコでぬちぬちと肉壁を押しつぶすような腰の動きをはじめたのだ。

「あ――…!くっ…ぅうん!」
それだけでまたイっちゃいそうになる、けど。
次イっちゃったら、自分は絶対失神しちゃうから必死にこらえる。

今日みたいな日に、蛮ちゃんがある合図をする前に気を失うと、どうなるか知ってるから…。

「うぁっ…ひ、ぃっ…」
だけど、蛮ちゃんは加減をしてくれない。
…また胸まで弄ってくる。
「やめっ…て…!」
さっきみたいなつまむだけじゃなくて…指の腹で捏ね回すような。
でもたまに、優しく擦られる。

「あっあ…っく、」
少し胸に意識がいくと、後ろを激しく貫かれる。
あまりの気持ち良さに、涙が溢れる。

「銀、次…も、少し…」
蛮ちゃんが腰を使いながらオレの涙を指ですくってくれる。

――オレがこういう行為を受け入れられるのは…コレ。どんなに身体が疲れちゃっても、次の日動けなくなっちゃっても…
蛮ちゃんが優しいから。

必ず翌朝にオレが目が覚める前に、後始末をしてくれてるし…。
オレは自分でするからいいよって言うんだけど、「これくらいさせろ」って。
その日には仕事も簡単なものしか受けないように気も使ってくれる。

こうやって蛮ちゃんがどこかで優しくしてくれるから、オレは蛮ちゃんが大好き。
大好きだから、受け入れられる…。

「ッあんっ!いっ…」
いきなり胸を噛まれた。
何か、胸の横を流れるものを感じる。
ふと視線をよこすと、胸に顔を埋める蛮ちゃん。…と、赤い血。
あぁ、噛み切られちゃったんだ…と、ぼぅっとする頭で考える。

ちょっとして、後悔で心がいっぱいになる。
噛まれちゃったことに対して、じゃなくて。
明日、これを見て蛮ちゃんはまた悲しそうな顔をするんだろうなぁ…って。
そう思うと、オレも悲しくなる。

「ん、ぁ…ふはっ…」
流れた血を舐めとるように、蛮ちゃんがしたから上へ舌を滑らす。
舌が通った一線は、少し経つと冷えたようになって…。
おまけに、血をどくどくと零している赤い実を、ちろちろと労るように舌を遊ばせている。
痛くされたあとに優しくされると、…何も考えられなくなってしまう。

「きゃっ…や、う…!ふぇっ…」
あ、つっ…?
蛮ちゃんがイったみたい……。
ナカがぬるつきで満たされる。

「あ、ンっ…!んぅ、ひぁっ」
あとででてこなくなちゃうんじゃないかっていうくらい奥で、蛮ちゃんが何度も精を吐きだす。
その間にも、腰の動きは止まらない。
蛮ちゃんがイっちゃうより前よりもぬるぬるして、滑りがいい。

「あぅっ…!も、イっちゃ…ぁ…!」
――ドクッ…
…オレも二度めの絶頂を果たす。
襲ってくる快感に逆らうように、ふるふると首を横にふっていると…蛮ちゃんの瞳が近付いくる。

キスしてくれるのかなぁ…って思ったら、そのまま唇は通り過ぎて、耳たぶへ押し付けられる。
――そして、流される低音。

「…ありがと、銀次…。ゴメンな…もう休んでいいぞ…」
終わりのコトバ。
それを聞いた瞬間、オレの意識は真っ白になった。

…あ、でも…まだ言ってないことが…。
すごく、大切なこと…。


「蛮ちゃん…大好き…」

ホントに大好きだよ。
 

 

 

やっとボコ愛って感じですかね? めずらしく1ページで終わった(笑

 

お題