Body and mind 4

 


「あっ…ほんとだ!やったぁ、蛮ちゃん戻ったよ!」
蛮に言われて気付いたのか、銀次の顔がもっと眩しい笑顔になる。

「…でもなんでだろうね?」
…これが最大の謎。
蛮と銀次は、卑弥呼の毒香水で入れ替わってしまったはずなのだ。
なのにどうして、解毒香を嗅がずに元へ戻ったのか…。

「さぁな。…てか、あの男は?」
「あぁあっ!そうだ、あの人!!」

車から一旦降り、周りを見渡すが…男の姿は見当たらない。
「んぁ…?」
銀次が、妙な声を発した。
「どうかしたか?」
「いや…もしかしてアレ、そうかなぁ、って思って…」
銀次が見つめているほうへ視線をずらすと。
10m程先の道路に横たわっている、あの男の姿。
その横には、ボンネットがヘコんでいる車が一台。

「…轢かれたな」
「……死んでんのかなぁ?」
「…さぁなぁ…。ま、とりあえず…奪還成功!」

 

××


「おかえりなさい!どうでしたか!?お仕事!」
HTに入ると、こっちに駆け寄ってくる夏実ちゃん。
「おー!上手くいったぜ!」
「うん!あのね、なんだかわかんないけど、元に戻れたし!」
「そうなんですか!?良かったですねー!」
にぱ、と笑い、マスター!と言って夏実ちゃんは向こうへ走って行った。

「ヘヴン!奪還成功だ!」
奥に腰かけていたヘヴンの方へと向かう。
「あら!お疲れ様v良かったじゃないのー。元に戻れたんでしょぉ?」
先程の会話が聞こえていたらしい…。

「まぁな。理由はわかんねェけど…ま、愛のチカラ?」
どかっと向かいのソファへ座り、ヘヴンとは反対の席に着く。
「ちょ、蛮ちゃん!」
蛮の台詞に顔を真っ赤にした銀次が、同じ所に座りながら蛮を咎める。
「あらぁ…ラブラブねぇv」

「あ、そうだヘヴン。ちっと卑弥呼に連絡とってくんねェか?この間の通話で携帯止まった」
まず元に戻ったことを報告したかったのと、…文句を言いたいのと。

「了解したわ。…あ、しまった…携帯家に置いてきちゃったわ…。また今度でいいかしら?」
申し訳なさそうに眉を寄せ、ヘヴンが手を合わせる。
「あぁ。別に急ぎじゃねェしな。構わねェよ」

「悪いわね」

「それより金!」
なんのために危険を冒してまで依頼を受けたと思ってやがる。


―――さっき銀次には呆れられたけど。
…俺は結構本気で思ってるぜ?
『愛のチカラ』…って。

あん時の俺のお前を守りたい…って想いが、
奇跡を起こしたと思ってる。

『奇跡』やら『愛』なんて、今まで俺に全く必要の無いコトバだったけど。

お前に出逢えたから、こういう風に考えられるようになったって…感謝してる。


「なーんて…な」
こんなこっぱずかしいこと、本人には言ってやんねェけど。

 

 

 

美堂さんと銀次が入れ替わっちゃうお話でした。優様、ありがとうございました!

 

 

 

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