意地悪

 

…蛮ちゃんは、意地悪だ。
別に…最近わかったことじゃないけど。

――ギリギリの線まで煽っておいて、その後はもう知らんぷりするんだから…。

だってさ、ひどいと思わない?
オレだって…そういうコトが嫌いなわけじゃないのに。
…むしろ、蛮ちゃんとなら好きなのに。
あくまでも、オレから誘ったっていうふうにしたいだなんてさ。

ホントに…人を煽るのが、上手い人。

 

「ちょ…ちょっと蛮ちゃ…まだ、だめぇ…」
「何がだよ…?」
「やぁ…!」

お仕事から帰ってきて、すぐこれ。
お風呂だって入ってないし…なんていうか、気持ちの準備が…。
蛮ちゃんったら、家に入った途端ベッドに直行なんだもん…。
彼の強引さにはいつも驚いてるけど…。
いきなりのお姫様だっこはすっごくびっくりしたよ…。

「だめぇ…、蛮ちゃ…お風呂、ぉ…」
「どーせまた汚れるんだ…変わんねぇだろ…」
この間にもシャツの中に入ってくる手を、どうにか振り払うので精いっぱい。
(ほ…ほんとに…せめてシャワーを浴びさせて…!)

「だっ、だめったらぁあ…!」
「もーこんなになってるクセに…」
「やっ、も…イっちゃ…ぁ…」
…色んな所を触られて、もうだめ…というとこまできて。
…蛮ちゃんは、ぱっと手を離してしまうのだ。

「おっと…お前…シャワー、…浴びたいんだっけな?」
…ニッコリ。
クラっときそうなくらいの笑みを浮かべて…。
中途半端に熱の上がってしまったオレを、浴槽へ押しこんで。


「…ひどい…」
そして、ブクブクとお風呂に沈んでいるオレ。
…あの蛮ちゃんの触りかた。
いやらしいったらないよ…。
まるでガラスにでも触れるような優しい…。
――言い方を変えれば、すごく大事に扱ってくれてる。

「……蛮ちゃ…大好き…」
彼が優しいのを、こんなにも知ってしまったから。
…あそこまできたら、もう最後までシてくれればよかったのに…。
…蛮ちゃんを感じたかったよ。

「……もうっ!いいもん…オレから誘っちゃう、もん…!」
ざばぁっと、勢いだけはよくお風呂からでて。
ぱぱっとシャツを着て、下は…タオルだけで。
向こう側を向いて、テレビを見ている蛮ちゃんのところに行った。

「おー、出たのか…。じゃ、俺も浴びてこよ…」
そういって、蛮ちゃんはオレとすれ違うようにお風呂場へ向かって…。


…えぇ!?
ちょっ、ちょっと待って…!

「……何?」
…無意識に、蛮ちゃんの服の裾を…掴んでいた。

「まって…蛮、ちゃぁ…」
…何だか急に不安になって。
さっき蛮ちゃんのことを拒んじゃったから、オレのこと嫌いになっちゃったのかなぁ…とか。
もう、蛮ちゃんはオレとはシたくないのかなぁ…とか。

「…どうした?」
一旦踵を返して、蛮ちゃんはぺたんと元の位置に座った。
…わかってるくせに。
わかってるくせに、何が何でもオレに言わせようとするんだ…。

ぺたぺたと蛮ちゃんの隣に行って、すぐ隣にしゃがみこむ。
そして、横にある蛮ちゃんの肩にこつん、と寄っかかって。

「…蛮ちゃん、意地悪」
「…何を今更」
…すぐ近くで聞こえる蛮ちゃんの声。
熱を孕んでいるのが、オレでもわかる。

「……蛮ちゃ……シよ…?」
――こんな、誘った事なんてないから…。
どうすればいいのか…わかんないよう…!
…半分泣きそうになりながら、言葉を続ける。

「あんな…触り方しといて…ひどいよ…ぉ…」
「……ったく…ひどいのはどっちだっての…」

ぐるん、と視界が回って。
…気がつけば、目の前には蛮ちゃんの綺麗な瞳。

「ぁ…」
「…いっつも煽りまくってんのはどっちだってんだ…」
「んぅっ…」

息苦しい…と思ったら、唇を重ねられていた。
おまけに、熱い舌が入り込んできて…。
歯列をなぞるように口内を愛撫されて、身体に力がはいらない。

「ふ…ぁ…蛮ちゃぁ…!」
「……ここでスるのと、ベッドで何回もスるの…どっちがいい…?」

耳元で低く囁かれて。
甘い砂糖が流れてくるみたいに、何も考えられなくなる…。

「蛮、ちゃ…」
「どっちがイイ…?」

ぺろ、と耳朶を舐められて。
…ぞくんっ、て。
背筋を何かが這うような感覚。

「…ぁ…ベッド、行きたぁ…い…」
「…大人しくしてろよ…」

ひょいっとまたお姫様だっこをされて。
広くて厚い蛮ちゃんの胸板に、…静かに頭を預けた。

蛮ちゃん…大好き…。

 


リア友のリクで、「美堂さんの隣に座って寄っかかる銀次」…ちょっと違ったような気もするけど、そんな感じでした。
えへへ。←(意味不  最後はどうしても「蛮ちゃん大好き」で締めたくなるという件について。

 

 

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