「それじゃ頼んだわよ、GetBackersのお二人さん!」
「っと、依頼を受けたはいいものの…」
「なんだかよくわかんないね?」
違ェよ、わかってねぇのはお前だけだっつの。
お前…依頼内容聞いてたか?
蛮は心の中で毒づいた。
まったく大の男が首傾げたって気持ち悪ィだけだろうが。
…なのにどうしてお前はそうも…可愛くなっちまうんだ。
っと、話が違ェな。
隣で今も「?」を浮かべている相棒兼恋人の姿を見やり、
…小さく溜息を吐いた。
『はぁああ?ヘヴンテメェ、ふざけてんのか?』
『なによぉ、あんた達にしかできない仕事でしょぉ?』
『あのなぁ…!だからってそれは』
『あーあ、200万なのになぁー?封筒一枚奪り還すくらいできないのかしらねー?』
『よっしゃ銀次ィ!こんなん俺らにしたら朝飯前だよなー!!』
…いや、まぁ俺らにしちゃぁ朝飯前なのはマジなんだけど。
だって…
「ねぇ蛮ちゃん。ホモホテル…ってなぁに?」
――そう。
今回の奪還の場所は…、そういう趣味をもたれる方々が集まるホテルだ。
ホテルといってもラブホテルとかそんな軽い感じのところではない。
一見きちんとした…普通のホテルで、まさか誰もホモホテルだとは思うまい。
そこで、ホテルに3日前から宿泊しているある一人の男から、
大事な一枚の封筒を奪還してほしい…と。
そんなもん自分で奪り還せよ、と言いたいところなのだが。
…なんせ相手はホモホテル。
仕方なく依頼を受けたのだ。200万に釣られただけだけど。
「…俺らみてぇのが集まる場所みたいな感じだ」
「…オレたち?…ってなぁに?」
「だからぁ…」
ホモが集まる所だっつってんだろ!
「わぁああ――――!!」
「すげぇな……無駄に」
最後のあたりは銀次に届いていなかったみたいだが。
すごいっ、すごいよ蛮ちゃん!と目をキラキラさせて喜ぶばかり。
「さて…と、さっさと終わらすか」
…場所自体はものすごーくイイ環境だが、
なんといっても宿泊客は…なぁ。
「あ、待って蛮ちゃん!」
「ンだよ?」
ぱたぱたとこちらに駆けてきて、何事かと思えば…
「ここってそういう所なんだよね?蛮ちゃん気をつけてね…?」
耳にこそこそっ…というように、んなことかましやがった。
離れた顔を見てみれば、本当に心配そうな表情。
一発殴ろうと思っていたが…そんな気も失せる。
「ったく…何アホな心配してやがる?」
「アホじゃないよ!だって蛮ちゃん…」
「バーカ、狙われるとしたらお前だっつの!」
「…へ?」
…くそ、言わせんなっつーの。
「いやぁぁああ蛮ちゃぁぁあああん!!」
「このバカ銀次!俺から離れんなっつってんだろ!?」
ここに来て一夜が経ち、朝飯を食いに行く途中。
…どうやらすれ違った奴に触られたらしい銀次が、
ものすげぇ悲鳴を上げて抱きついてきた。
「うぅ…怖いよぉ…」
「だぁから離れんなっつってんの!言うこと聞いとけ!」
ごめんなさい蛮ちゃぁん…と、俺の理性など何も考えずにぐりぐりと頭を寄せてくる。
――その時、カサ…と小さな音がして。
「…おい銀次。さっき触られたトコ…どこだ?」
「え…?えっとね、……あれっ?」
くるっと首だけ回して、自分の腰辺りを見ようとした銀次。
…そこで、異変に気付いたらしい。
「なにこれ…?」
「………奪還成功だな」
「……えぇぇええ!?」
なんで?なんでっ?とさも不思議そうにしている。
その時に自分の腰を追うようにくるくると回って、…見ようによってはいやらしい。
「さっきの人…?」
「…みてぇだな、心ン中で礼言っとけ」
早く帰ろうよぉ蛮ちゃん…、と涙を目に溜めながら縋ってくる銀次の願いで、
すぐにスバルへと戻り。
なにがどうなの?と聞いてくる銀次に、…努めてわかりやすく説明をしてやった。
「…要するに、お前にセクハラした奴が大方ソレを持ってたんだろ。
で、俺らが奪還屋っつーのも相手は知ってたんだろうな…」
「それが何と関係あるの…?」
「……相手がお前に惚れたんだろ、たぶん。
サービス…ってトコはじゃねぇの?」
…若干不機嫌になりながら。
ヒラヒラと奪還物の封筒を揺らめかせた。
「…ま、終わり良ければ全て良し…ってな」
――銀次の前ではそういったものの。
…なにがすべて良しだコラ!
HTに着くと、丁度ヘヴンが来ているところだった。
俺らの顔を見るなり「あらぁ、随分早かったわねぇ?」と
ニヤニヤと笑った。
とりあえずは依頼成功。
めずらしく金が入った…と思いきや、HTで溜めに溜めまくった借金にほとんどが消えていった。
それでも手元に残った残金で、…「普通」のホテルに泊まった。
「ふわぁ…っ、普通のホテルっていいねぇ…」
「だな…。もーあんなトコロは二度と行きたくねェ」
二人してベッドに倒れ込み、くすくすと笑った。
「…ね、する?」
「…どっちでもいいぜ?お前今ホモに散々なんだろー?」
「やっ!蛮ちゃんは違うよっ?」
「わぁってるっつーの…」
――銀次の耳元に唇を寄せて。
こんなん俺のキャラじゃねぇよな…。
なんて今更な事を思いつつ。
愛の言葉を囁いた。
蒼碧様との相互リンク記念の小説です。こ、こんなものですいません…! これからよろしくお願いしますv