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Sweeter than sugar

 


なんか…見てる、な。

さっきから、チクチクと銀次の視線が突き刺さってくる。
気のせいではない。…と思う。
もしかしたら、サングラスを掛けていないから、
めずらしくて見ているのかもしれない。

…まったく、素直に「見せて」と言えばいいのに。

それとも、まだ俺が瞳を見られるのが嫌だと思っているのだろうか。
確かに他の奴にジロジロ見られるのは気に入らないくらいだが、
…銀次なら、別になんともない。
むしろ、『銀次が俺の瞳を綺麗だと思ってくれている』ということを、
柄でもなく喜んでしまうくらいだ。
 
――…ずっと本を読んでいたからだろうか、少し疲れた。
無意識に前髪を掻き上げると、銀次から息を飲み込む音が聞こえた。

…なんとなく、想像はつく。
ヤツは、変なトコロで興奮(?)するヤツだから。
少し経つと、『あ、わわ…』などと声がして、ぺちぺちと何かを叩く音が届き。
ちら、と見れば、顔を真っ赤にしている銀次がいた。
軽く頬を叩きながら、一人でアワアワしている。
――…何をしているんだか…。

ちょうど読んでいた本も、区切りのいいところまできた。
今日はここまででいいか…。

 

「銀次?」

 

――びくん!

 

………。
わっかりやす…。
がばっ!と顔を上げて、桜色に染まっていた頬を、もっと赤くした。
俺の瞳を見ては、また一人で慌てている。

「あっ、ううん!なんでも…ないの…」
「……」

…それのドコが、なんでもないっつーんだよ。
いつもはこっちが気恥かしくなるくらいに、真っ直ぐ目を見て話すクセに。
言い終わる前に視線反らしやがって。

でも、コイツの様子が変な理由はわかっているから。
そんな仕草が、可愛くて可愛くてたまらない。
つい、喉の奥で笑ってしまった。

――あぁ、もう。
どこまでハマらせれば気が済むのだろうか。
…もう、ヤバいくらいに…惚れているのに。

ぱたん、と静かに本を閉じた。
銀次がこちらを向く前に、そっと押し倒した。
顔をのぞいてみれば、『…いつの間に?何があったの?』とでも言いたげな表情。
銀次が騒ぎ出す前に、素早くこっちに有利な体勢をとった。

…そして、唇を重ね。

「んっ…!ふぁ、んぅ…」

――…なんて甘い声。
誰にも聞かせたくない…俺だけが聞けばいい。
そんな声を零しながら、必死に俺のキスについてこようとする。
本人は気付いているのだろうか。
触れ合う舌が、震えていることに。

「銀次ィ…」
「ぁっ…!」

…ったく、少し吐息を使って名前を呼んだだけでこの反応。
可愛すぎるっつーの…。
風呂上がりでもこんなになんねーぞ、というくらい真っ赤な顔。
優しく、ひらすら優しく可愛がってやりたい気持ちと、
イジめて、ひたすら意地悪にして焦らしてやりたい気持ち。
この相反する想いを、俺はどうすればいい…?

じわ、と目尻に浮かんでくる涙を見て、…決めた。
――…今日は、イジめる方向で。

「…どーした?…あんなに熱烈にオレのこと見つめちゃって…」
「っ…!」

わざと、銀次の羞恥心を煽るような声色で。
とくに銀次は、『ハズかしい』コトに弱い奴だから。
…だからイジりたくなるっていうのもあるんだけど。

タレるか?泣くか?逃げるか?
銀次がどうするのか、楽しみにしながら待っていると。


「…あの、ね」


ぽつり、と口を開いた。
逃げなかったことに驚きながら、できるだけ優しく、続きを促す。

「ん…?」

自分も知らないうちに、銀次を抱きしめる腕に力が入っていたことに気づいた。
少し痛いだろうか、というくらい。
力を抜いて、銀次への拘束を緩める。

「…ばんちゃ…が、すごく…カッコよくてね…」
「…おう」

…今すぐ、もう一度キスをしたい。
さっきよりも激しい、銀次を溺れさせるようなキスを。
そして、…今すぐ抱きたい。

そんな欲望をギリギリなラインで抑えながら、
空いた左手で、頬を軽く撫でる。
…俺、頑張ってるな…。

でも、何処かで分かっている。
…頭のどっかで、この後、銀次がどんなことを言ってくれるのか。
どんな風に、煽ってくれるのか。

 


「すごく、すっごく……好きだなって……」

――ホラ、な。
今、背筋を何かが走って行った。
ゾク…と、銀次だけが与えられるこの快感。


「……うん」


「思ったらね…。ずっと見ちゃってたの…」

 

――あぁ、愛しいイトシイいとしい。
まるまる、甘い砂糖に包まれているようだ。

…銀次は、逃げない。
きっと俺のコトを嫌いになったとしても、たぶん逃げない。
それを分かっている上で、『逃がしたくない』…と。

 


「……ずっと見てろよ…、オレのことだけ」


オレも、ずっとお前のことだけ見てる。
お前のことだけ考えてる。

 

「え…?」

 

「ずっと、オレのことだけ見てろ…」

 

最初は、な。
俺は銀次のことが好きで、銀次も俺のことが好きで。
それだけで十分だと思ってたんだ。
だけど、それが加速していくたびに。
…自分が想うのと同じくらい、
銀次も俺のことを思ってくれていないと…。
不安になるようになっていた。

 

「他のヤツなんて、見なくていい…。」
――つか、見させねぇし。


…あぁ、なんて愚かな独占欲。
最低だ、と思いながらも、口端が歪んでいるのがわかった。

 

――けれど、笑うのだ。
銀次も、恥ずかしがりながらも…優しく。

 

抑えきれない想いを、キスに託して。
言葉だけじゃ足りない、と銀次の身体にシルシをつけた。

 

 

 

Novel

 

ものすごく楽しかったです(笑)癒月様、素敵なリクありがとうございましたー!vv