lonely fighter

 

 

 

「んあ…」
「あ、バカ。お前熱あんだから…寝てろ」
「ん、ぅ…。」

 

 

Lonely Fighter

 

 

銀次が風邪を引いた。
体が丈夫な銀次にしてはとても珍しいことであり、
銀次自身も自分の体をうまくコントロールできないことに戸惑っていた。

「ごめ、んね…?」
「あ゛?」

…この台詞も、今日だけで何度目だろうか。
普段なら「何度も謝るんじゃねぇ!」とぶん殴っているところだが、さすがの蛮でも。

「…もうそれは聞き飽きた。それに、テメェは悪くねぇんだからよ…」
「蛮ちゃん…。…ありがとう…」

そう。
お前には、笑顔が一番似合うんだから。
ふにゃ、といつもより少し元気のない顔で、ゆるく笑った。

「…さーてと。銀次、そろそろ腹減ったかぁ?」
「んー…ちょっと。でも、あんまり食べたくない…かも」
「そっか。じゃぁもうちょい経ったら食うか」
「うん…」

 

まったく。あの銀次が、食欲がないなんて。
…それほどに、辛いのだろうか。
できるものなら、代わってやりたいくらいだ。

うっすらと汗をかき、少し息苦しそうに呼吸をする姿。
それは、見ている蛮の心までをも苦しめる。

額に乗せた冷たいタオルも、すぐにあったまってしまい意味のを成さない。
冷えピタを探してはみたものの、見つからなかった。
買いに行こうか…とも思ったが、今の銀次を一人にするわけにはいかない。
…というよりも、自分が。
自分が、コイツを一人にしたくない…と思ったのだ。

それじゃなくても、もの凄い寂しがり屋で。
少し家を空けただけでも、すぐに泣きそうになるし。
…しかし、そこが可愛くもあるのだ。

 

「ねぇ、蛮ちゃん…」
「ん?どーしたよ」
「あの、ね…。看病、してくれるの…すごく、嬉しいんだ、けど…」
「…?けど?」


…けど、なんだ。
…とても言いづらそうに視線を下げている。
何か、不安なことでもあるのだろうか。
心配になり、銀次の頭を撫でる。


「風邪…、蛮ちゃんに、うつっちゃう…から」
「……」
「だ、だから…」


…なんとなく、わかった。
大体は、俺に風邪が移っちまうから、看病しなくていい…ってとこか。
だけど、銀次のことだ。
理由が理由でも、とても俺に「部屋から出てって欲しい」とは言えないだろう。
…ほんっとに、コイツってやつは。


「…出てかねぇぞ」
「…!ば、蛮ちゃ…、だって…」


なんでわかったの?
みたいな顔しやがって。
俺様にな、お前のことでわかんねぇことなんてないっつーの。

 

「だって?なんだよ。俺は風邪ひかねぇし、もし移るとしてもお前の風邪なら大歓迎だ」

 

…元々デカい目を、もっと大きくして。
小さく、蛮ちゃぁ…と零した。
それが、すごく可愛くて。
いや…可愛いのはいつもか。

 

「ば、蛮ちゃっ…!」
「…は!?なんで泣くんだよ、俺泣かすようなこと言ったか!?」
「い、言ったぁっ…!お、おれっ…嬉し…!」

――嬉しいなら泣くなよ…。
でもまぁ、風邪引いてるときは涙もろくなるって言うしな…。

 

ふぇえ…と言いながらえぐえぐ泣く銀次を、思いっきり引き寄せて。
早く泣き止め、と。
真っ赤な頬に、軽いキスをおとした。

 

 

 

 

 

 

Novel

 


11111を踏んでくださったたまき様からのリクで、
「風邪引き銀次」でした!
リクを頂いてから約2ヶ月も経ってしまい、
本当に申し訳ありません(-w-`;;

弱ってる銀次と普段とはまた違う優しい雰囲気な
美堂さんを書くのがすっごく楽しかったです(笑)

たまき様、素敵なリク&キリ蛮を踏んでくださりありがとうございましたv
お持ち帰り等はたまき様のみでお願いいたします。