「やっ…痛…蛮ちゃん、ほどいてよぉ…」
押し倒されたあとすぐに、蛮ちゃんのベルトで両手を縛られた。
痛くはないんだけど、それなりにキツく縛ってある。
それに、めちゃくちゃ複雑な縛り方をしているみたいで、頭の弱いオレには絶対ほどけない。
…優しいのかヒドいのか。よくわかんない…。
まぁ、痛くないってコトは一応気にしてくれてんのかな?
「だぁめ…だって取ればお前、逃げるだろ?」
いや、それはすぐに逃げるけど…。
つつ、と後ろに縛られた腕をなぞられる。
その触れかたが妙にいやらしくて…
「っ…だからって縛ることないじゃんかぁ…」
あえて前の方は口にしなかったけど。
言ったらこの後何をされるかわからない…。
「ま、気にすんな。これも俺の趣味の一つだ」
…めちゃくちゃ気にするんですけど。
「蛮ちゃん…オレなんだかものすごい不安になってきたよ…」
思わず、本音を言ってしまう。
「何が」
何がって…
「何もかも、だよ…」
オレはこの人とこのまま、その…えっちなこと?を続けていいのだろうか…
ものすごく不安だ。蛮の色々な趣味に付き合わされそうで。
実際、今一つの趣味に付き合わされてるんだけども。
「オレ蛮ちゃんの考えてることがわからないのです…」
「わからなくていいんじゃね?俺の頭の中でお前がどんなになってっか知ってるか?
すげぇぞ、『蛮様のおっきぃのをオレにくださ』」
「わああああっっっ!!!!」
なっ、何を言い出すんですかこの人は!!!
「うっせーなぁ…な?知らないほうがいいだろ?」
な?じゃないですよ蛮ちゃん…
「はぁ…もう好きにしてください…蛮ちゃんと言い合っても無駄なのです…」
つい投げやりになって、こんなことを言ってしまった。
…後々すっっっごい後悔することとなるとも知らずに。
「銀次…痛いのと気持ちいいの、どっちがいい?」
ふと気になり銀次に問うてみる。
結構俺は本気で聞いたんだけど。
銀次は「はぁっ?」言う顔で見つめてくる。
ほら、俺の痛いのって容赦ねぇから。自分で言うのもなんだけど。
「……」
…なるほど、気持ちいいのって言うのが恥ずかしいらしい…。
どんだけ俺を煽るんだコイツは…。
「無言、ってコトはどっちでもいいんだな?」
「え、ちょっ、待っ…!」
「はい時間切れー」
痛いの決定。
つってもアレだ、銀次相手だから手加減はするけど。
「えええええ!!!待ってよ蛮ちゃんっ!!オレ痛いの嫌いだってばぁっ!!」
既に涙目の銀次。
…コイツの中で俺はどんだけSなんだ?
相当嫌らしい。
そんな銀次も可愛くて。
…あー、俺も相当重症?
「わーかったよ。痛いのはまた今度な」
「今度やるの…?」
不審な目でこっちを見てくる。
「何言ってんだ、あたりめぇだろ?今日は譲ってやるだけだ、今度ヤる」
「………」
ついに黙ってしまった。
ちょっと脅しすぎたか?これ以上言ったら電撃浴びせられそうだし…。
「ほら銀次、こっち向け」
さっきまでふざけてたような蛮ちゃんの声が、急に真剣になった。
言われたとおり上を向けば、いつの間にか目の前にある蛮ちゃんの整った顔。
そして、不思議な光を放つ瞳…。
皆はこの瞳を呪われている、とか言うけど。
なにが呪われているのかオレには全くわからない。
だってこんなに綺麗なんだよ?
なにが悪いの…?よくわかんないよ。
確かに、蛇眼を使う時は蛇さんみたいになってちょっと怖いかもしれないけど。
蛮ちゃんとお仕事してて、その蛇眼で何回も救われたし…。
蛮ちゃんの右腕も悪魔の腕とか言われてるみたいだけど、オレからすれば、いつもオレを救ってくれる腕。
…皆は蛮ちゃんのこと、よく知らないくせに言いたい放題だ。
世界中の人に「蛮ちゃんはオレをいつも助けてくれる優しい人です!!」って叫びたいくらい。
だけど、そんなこと無理だから。
皆に教えたいけど、きっとうまく伝わらないから。
そしたら蛮ちゃんに伝えるしかないでしょ?
いつもありがとう、大好き、って。
蛮ちゃんは呪われてなんかないんだよ。
男のオレが言うのもどうかと思うけど、蛮ちゃんはオレのたった一人の王子様だから。
だから、ずっと傍にいて?
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