「ぅぅぅうう――……」
泣きながら唸っている。
…怒っているのか?悲しんでいるのか?
よくわかんね…。
いきなり泣かれてこっちだって困る…。
「おい、小僧…小僧!」
本当は泣くなよ、と優しく慰めてやりてェ。
だけど…そんなこと俺にはできねェし。
ぽんぽんと頭と背中を、努めて優しく叩いて、
「泣いてんじゃねェよ…」
そう言うので精いっぱいだ。
「うっ…あのね、あのね、美堂くん……嫌じゃ、ない…!すっごく、嬉しかったの…!」
俺に好きだ、と言われたことが嬉しかった、と胸の中で泣きながらそう言う。
いつの間にか銀次の両腕も、俺の背中に回って、シャツを握りしめていて。
…すごく、愛しかった。
「…小僧、」
「や。」
「…は?」
俺の言葉は、銀次の意味のわからない否定の言葉に遮られ。
「やだよ、小僧って……せっかく…」
美堂くんの気持ちがわかったのに…
鼻が詰まっているのか、ずびずび音を立てながら銀次が言った。
「……銀次」
こいつにあってから初めて、銀次、と呼んだ。
心の中では、…出逢ったころから名前で呼んでいたけれど。
「っ…美堂、く」
「や。」
同じ言葉を返してやる。
「やだ。なーんで俺様が名前で呼んでんのにテメェは苗字なんだよ」
俺だけ名前で呼んでるなんて、…恥ずかしすぎるじゃねェか。
背中に回っている手に、力が籠ったのがわかった。
同時に、俺のシャツに皺が寄る。
だが、今はそんなことどうでもいい。
「早く呼べよ…」
早くその声で俺の名を呼んで欲しくて。
「蛮ちゃん、好きだよ」
本当だったら、このまま先に進みたかった。
けど。
「…ちゃん?」
聞き捨てならないものが…
「蛮ちゃんっ!大好きっ!!」
二つとも最後についている言葉はものすごく嬉しい。…のだが。
「………ちゃん?」
「…ダメ…?『蛮ちゃん』…ダメ、かなぁ‥」
涙で潤んでいる瞳で、上目使いでそう言われて…
断れるハズがねェだろが。
「う…別、に…お前がそうしたいならそうしろ…」
変な呼びかたされてもイイ、と思えるくらいに銀次が可愛かった。
…完璧に負けたな。
ぱっ、と向日葵のような笑顔を咲かせ、
「蛮ちゃん…ありがと…!やっぱり蛮ちゃん優しいっv」
と言った。
…まぁ、ここまで喜ばれるんなら譲歩した甲斐があるっつーもんだ。
「じゃ、さぁて…銀次…」
今まで我慢してきた欲が、さっきの銀次の満面の笑みで止めを刺された。
…我ながら黒い笑みだと思う。
銀次が驚いたような、怖がっているような…そんな微妙な顔をしている。
「えと…その、それはつまり…」
「セックス、だな」
どうせ銀次には遠回りに言っても気付かねェんだろうな、と思いキッパリ告げる。
当の銀次は、顔を真っ赤にさせ、瞬きを繰り返している。
…可愛い…。どんだけ俺を煽れば気が済むんだ、コイツは…。
「…嫌、か?」
お互いの気持ちがわかった今、無理矢理にはしたくない。困ったように俯いた銀次にそっと問うた。
「う……狡いよ、その聞き方…」
オレが断れないのをわかってて、そんな聞き方するんだから。
こつん、と俺の胸に額を押しつけながらそう言った。
その発言に、自然と頬が緩んでしまう。
「…つーことは、先に進んでもイイ、と受け取っていいんだな?」
あまりにその様子が可愛くって、ついからかってしまう。
「っ、だからっ…そんな風に一旦引くの、ズル…!」
ばっと真っ赤な顔を上げ、少し大きな声で訴えた。
その瞬間を逃さずに、すかさず唇を合わす。
「っ、…!ふぁ…」
いいんだよな?先に進んでも。
嫌じゃ、ないんだよな…?銀次。
自分でも狡いと承知の上で、聞いた。
嫌な思いはさせたくないから。
「…う、ん……シ、て?」
今更になって拒否られるとは思ってなかったけど。
…ここまで可愛いお誘いをされるとも思ってなかった。
「っ…」
下半身直撃。じゃなくても反応しまくってるっつのに…
「ば、蛮ちゃん…??」
急に眉を寄せ、苦しむような動作をした俺を心配したらしい。
上目使いで、ちょっと涙が溜まっていて。
…心配してくれたはいいが、逆効果。
「…銀次ィ…悪いな、理性とか我慢とか…抑えられそうにねぇ…」
聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさで銀次に告げた。
「え…ちょ、蛮ちゃん?」
言ってることの意味がよく把握できなかったらしい…。
「いぃや、何でもねェよ。…続き、するぞ」
強制的に話を終わらせ、行為を続行する。
「あ、ん…や、蛮ちゃん…」
胸の飾りを少し服で掠めただけでこの反応。
…こいつ、本当に初めてか?
「あ、のね、蛮ちゃん…オレ、こーゆーの初めてだから…その、ゆっくり、してほしい、の…」
俺の心を読んだかのようにそういった。
…確かに、コイツのカラダの返す反応は、初めてかと疑うほど。
けれど、銀次の反応は…
味わう快感に戸惑いを隠しきれない、といった様子。
それに、銀次が俺に嘘をつけるほど器用ではないし…
「…あぁ、わかってる…。安心して任せとけ…」
頭を撫で、軽いキスを送った。
「ん、ぅ…ふゃぁっ…!」
突起を舌で転がしながら、手を下へとのばし銀次のモノを握る。
「あっ、ぁ…!嫌、ぁ…見ないで、蛮ちゃ…」
顔を両手で覆いながら、カラダを左右へ捩じらせる。
だがそれも上手くいかないのか、俺の爪が先端へと当たってしまった。
「ひあああっ!!やっ、やぁ!!」
今日で一番の嬌声。
「…今のは俺悪くねェぞ」
まるで俺がわざといじめた、みてェな顔をしてこっちを見やがる…。
これからもっといじめてやるっつーのに。
「一度…イくか…?」
まず快感、というものを教えてやりたくて、銀次の自身を握った手を上下に動かした。
「ぁっ、あっ…んあぁ…ひぁうっ」
自身から溢れて来る先走りが滑りを助け、動きを良くする。
「いやぁっ、も、ダメっ…離してぇ…!!」
限界が近いのか、足の付け根あたりが痙攣している。
銀次の目尻からも、涙が溢れて…。
興奮が、抑えられない…。この表情だけで抜けるな…。
「イけよ…銀次…」
欲を孕ませた声で囁き、手を射精を促す動きへと変える。
「んゃっ、ダメぇっ!手、汚しちゃぁ…!!」
銀次は俺の手を汚すことを躊躇っているらしく、解放を堪えている。
…こんな時まで、人のことかよ…
「ホラ、イけって…どうせ手なんてあとでもっと汚れるんだから…」
耳たぶに唇を押し付け、先端に爪を食い込ませた。
「あぁぁぁっ!!!ひっ、ふあっ!い、やぁ…!!」
先程の嬌声をこえる、甘い悲鳴。耳に心地いい…。
…もっと、聞きたい。