つねる

 

美堂くん、オレよくわかんないよ…
あなたにとって、オレは本当に必要な存在なの…?


「…テメェ、本気で言ってんのか?」
いきなり。本当にいきなりのこと。
目の前にいる金髪が、爆弾発言しやがった。

『ね、美堂くん…オレ、やっぱり無限城に戻るよ。』
一瞬、反応ができなかった。
どうしてコイツが俺から離れていく?どうしてコイツはこんなことを言ったんだ。

「本気、だよ。冗談でこんなこと…言うわけないじゃない…」
わかってる。そんなこと。俺が一番わかってる。
いつもニコニコ笑っている銀次が、深刻な顔をして言うのだ。
冗談なワケ、ない…。

その事実が、痛かった。

「美堂、くん…?」
最初の一言以来、何も言わない俺を心配したのか声をかけてくる。
…そんな言葉、いらない。
心配するくらいなら、さっき言った事を撤回しろよ…!!

本人には言えない、俺の気持ち。こんな時に素直になれない自分の性格が恨めしい。

「美堂くん…」
どうやら俺が怒ったのだと思ったらしく、銀次の表情が沈む。
…違う。怒っているんじゃない…
お前が無限城に戻る、と言った事に怒ってるんじゃねェ…
お前が、俺から離れていくことに怒ってんだよ…ッ!!

「小僧…」
やっと出てきた言葉は、たったのそれだけ。
伝えたい、言いたいことはメチャクチャあるのに、どれから言えばいいのかわからない。

こうしてる間にも、銀次は俺から離れていってしまうかもしれないのに…

銀次が自分から離れていく、という焦りに、どんどんと考えは蝕まれていく。
冷静な判断ができない。

…ゴメンな、銀次。

俺は、こんな方法でしか…
お前を傍に置く考えが浮かばねェよ。

心はその考えに冷めていくのに、身体の熱は上がるばかり。

「小僧」
顔を近づけ、興奮を押し殺した声で銀次に囁く。…抑え切れていたかはわからねェけど。
息がかかったのか、ぴくん、と身体を揺らめかせる銀次。
耳元へ唇をよせ、柔らかそうな耳たぶを深く食む。
「っぁ…ひぅ、あ…」
今まで聞いたことのないような、鼻にかかった甘い声が耳もとで聞こえる。
それだけで俺のモノはビンビンに反応していた。

最後にかり、と膨らんでいる部分に歯を立て唇を離した。

「っは…美堂、くん…?」
涙を瞳に溜め、こっちを見つめてくる。
本人にはそんなつもりはないのだろうが…
煽られている気分だ。

顎に手をかけ、真っ直ぐ俺に向かわせる。
「っ!?」
素早く唇を奪い、呼吸もできないくらいに深く唇を押し付ける。
「んんっ!ふ、ぁ…」
眉を潜め、目尻から涙を零している銀次。
…そんなに俺に触られるのが嫌かよ…
理不尽な苛つきが俺の中に積もっていく。
このままだと、銀次を乱暴にしてしまうのが目に見える…。
できるならば、感じさせてやりたいのに…。
一度唇を離し、銀次と向かい合う。

「美堂、くんっ…!」
どうして、という表情で俺に訴えてくる。

言って、いいものなのか。この気持ちは。
どうせ、この行為で銀次が俺から離れていくことはわかってる。
最初は銀次を引きとめるために、と思っていた。
だけど…銀次の喘ぐ姿を見てしまえば、手加減なんかできやしない。
メチャクチャに犯して…逃げられるのがオチだろう。
それなのに、この気持ちは…伝えてもいいのか?

「美堂くん…オレ、ね」
いつまでも黙っている俺の代わりに話すように、銀次が呟く。


「オレ、美堂くんのこと…好きだよ」


続いて告げられた言葉に、目を見開く。
「気持ち悪くて…ゴメンね、でも…やっぱり、オレ美堂くんのコト…好きなんだぁ…」

なにが、気持ち悪いものか。
同じ気持ちを抱いているというのに。

「…ゴメンね、美堂くん…こんな奴が相方なんて…嫌、だ」

自分を卑下するようなことを言う唇を、再びふさいだ。
もちろん俺の唇で。

さっきのような自分の気持ちを押し付けるようなキスではなく…
俺の気持ちにも気付いてくれるように、優しいキス。

銀次の下唇を軽く舐め、口を開くように促す。
「んぅ……」
くぐもった声を上げるが、そっと唇を開いた。
すぐに舌を潜り込ませ、口内を弄る。

「ふ、ぅ…ん…ぁ…」
どこか抑えているような、控え目な甘い声。

「はっ…美堂くん…?」
頭にハテナでも浮かんできそうな勢いで、俺に訪ねて来る。
気持ち悪くないの?、と。

「…だ」
「え…?」
もう無理。抑えらんねェよ。こいつはこんなに…素直に気持ちを教えてくれたってのに。

「好きだ、っつったんだよ…!」

逆ギレ気味にそう叫ぶ。
ここまでデケェ声で言うつもりはなかったんだけど…
自分でも驚くほど、ハッキリと告げていた。

「…………」
俺を大きな瞳で見つめたまま、何も言わない、何もしない銀次。
…あんだよ。好きで悪ィかよ。
思わず口に出しそうになった。

だけど、こいつがいきなりボロボロ泣きだすから。

→2

 

お題