「……は?」
「だぁからっ!このサービス券あげるって言ってんのよ」
――蛮君、誕生日でしょう?
現在、オレの誕生日の一週間前。
(今ヘヴンに言われるまで気付かなかったが…。)
元々、誕生日だとか記念日とか…そういうのは興味ねーし。
むしろ、いちいち祝うのが面倒くさい、鬱陶しいと思っていたくらいだ。
…しかし、銀次に出会ってから。
とりあえず、『誕生日』には関心が持てるようになってきたのだ。
…銀次いわゆる、『誕生日っていうのはすごーく大事な日なんだよ!』
『だって、その人が生まれてきてくれた日なんだから…おめでたいに決まってるじゃない!』と。
『誕生日なんざ、なんもめでたくねーよ』と銀次に言い放った、奪還屋を組み始めて初めて迎えた12月17日。
銀次は俺が言い終わった途端、ボロボロと泣き始めて。
…そう言ったんだ。
それを聞いてから…なんとなく、『銀次の誕生日』にゃぁめでたいと思うようになった。
正直未だに自分の生まれた日などどうでもいいが、それを言ったらまた銀次に説教されちまうし。
…それに、銀次がオレがこの世に生まれた日を祝ってくれるのは…悪い気はしない。
というか、ぶっちゃけ素直に嬉しい。
…この感情さえ、銀次と出会ってから知ったものだが。
――そして、一週間後に控えたオレ様の誕生日。
いつも通り、HTに来てたオレ達。
そこに、ヘヴンがやってきて。
ちょいちょい、と指でオレを呼んできた。
「…なんだよ」
「やぁね、銀ちゃんがいなからってそんな不機嫌な顔しないでよ」
「うるせーよ…。んで?何か用かよ?」
「(…否定しないのね)…ん、そうだったわ。…蛮君、一週間後誕生日でしょう?」
「…まぁ」
「そ・れ・で!誕生日プレゼントに、銀ちゃんをあげたいと思ってんのよ!」
「……はァ!?」
……な、何を言い出すんだこの女…。
「……銀ちゃん、欲しいデショ?」
呆然としていたオレに…トドメの一言。
…そりゃめちゃくちゃ欲しいっつーの!!
――オレは、銀次が好きだ。…ってのは、もう今更だな。
最初は…正直、オレが一番嫌いなタイプの奴だ、なんて思ったこともなくはない。
無駄に明るくて、うるせぇし…バカだし能天気だし。
頭の良いオレ様にとっては、とても耐えられない…と。
しかし、気付けばその性格に惹かれていたのだ。
その笑顔に…癒されていたんだ。
「……そのサービス券ってなんだよ」
「…聞きたい?」
「聞きたいもなにも…」
「ラ・ブ・ホ・テ・ルvv」
「なッ……!!!!!」
――…ヘヴンの言葉に、驚いた瞬間。
「ばっんちゃぁぁぁんvvv」
「うおぉぉぉ!!!」
波児に買い物を頼まれ、帰ってきた銀次が。
そりゃもう勢いよく…飛びついてきた。
…あぁ、もう。
そんな笑顔で…抱きついてくるなって。
可愛すぎんだろ…!!
「なになにっ?なんのお話してたのー?」
「いや…その…」
…このぽややん頭に。
このド天然に「ラブホテルのチケット貰おうとしてました」なんざ言えるかァァァ!!
頭の上に疑問符を何個も浮かべて首をかしげる銀次。
…あぁ、だからンな可愛くすんなってば…。
兆してしまったらどーしてくれんだ!
「ん、お仕事のお話よ!」
「そーなの?お仕事きたの?」
「残念ながら今回はないのよー。ごめんね?」
「ううん、ヘヴンさんは悪くないよ!」
「ありがと銀ちゃんv」
…ちら、とヘヴンがこっちを見た。
まるで…『フォローしてあげたんだから、素直に受け取りなさい』…みたいに。
大体…誕生日プレゼントに、ラブホのチケットっておかしくないか?
それも、プレゼントは『銀次』。
…色々とツッこみたい部分がありすぎる。
そして、このオレも。
――…銀次を欲しがってる、このオレも。
――12.17
「……はァ」
――とうとう来てしまった。
…オレ様の誕生日が。
一週間前、結局オレは、ラブホのチケを受け取ってしまったのだ。
ヘヴンの目つきが怖かったのと、…銀次が欲しかったのと。
この機会に、銀次に告白をしよう。
そして、銀次にプレゼントになってもらえばいい…なんて、思ってしまったのだ。
…今考えなおせば、なんて恐ろしい考え。
第一、銀次に「オレのもんになってくれ」と言ってもアイツに理解できるのか?
「オレはモノじゃないよ!」と返されるのがオチだ。
目に見えている。見えすぎている。
「好きだ」と言ったとしても。
「オレも大好きだよ、蛮ちゃんv」と天使の笑顔で返されるだろう。…きっと。
いや、絶対。100%。そう返されるに決まってる。
なんていったって…銀次は鈍い。
ありえないくらいに鈍い。
…そこに惹かれたといってしまえば、そこまでなのだけれど。
――現在、当の銀次と言えば。
スバルの中、助手席で気持ちよさそーうに眠っている。
といっても、今はまだ朝方の4時半。
眠っているのが普通だろう。
「…ったくよー…可愛いすぎんだよ…」
ぽそり、と呟いた。
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